パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

歩く道は晴れであれ

大変なことになった。大変なことになったぞ、これは大変なことだ。どうしよう、どうしようもないけど。おめでとうって言ってもらえたからこれは喜ばしいこと、望んでいたこと、夢だったことのはず。だけど、ちょっと待ってくれ、心の準備ができていない。だから今日は一旦普通列車で帰ることにする。ちょっと考えさせてほしい。

思ってもみない出来事すぎるあまり、その事実を何度も何度も確認した私の顔は、まだ何の責任も重圧も知らない間抜けなツラをしていたことでしょうねと思う。だって本当に予想だにしなかった、そんなはずなかった。こんなポンコツがちいさな組織を抱えられるのか?本当に。未だ信じがたくてドッキリなんじゃないかと思ってる。でも、素直に受け取ればこれは期待でこれは好機でこれは、またとない、その、いわゆる、成長のアレ。

やってやりますか〜!と肩肘張ってぶん回すみたいなのは性に合わんし、エンジン全開で蒸すのもなんか違う気もする。私は私らしく、それが評価されたんだから無理に変える必要はないってえらいひとに言われた。

普段は興味のかけらもない自己啓発本を手に取ってしまったのは完全に動揺の表れでしょう。巷にマネジメント(笑)本が溢れている理由が今やっと分かった。必要としている人間がこの社会にはごまんといるからなんだろう。今日を境に私もまたそのうちの一人となったらしい。

これまでは自分の感情の機微だけを気にして生きていればそれでよかったけど、これからは全く異なる風向きの中を歩いていかないといけない。私はどんなふうに歩いていったらいいんだろう、それから私はまだ整備されていない凸凹の道をどんなふうに歩いて行きたいんだろう。

その答えなんて今はもちろん分からないけど、歩く道が決まっているのはとてもありがたいこと。わたしの居場所はしばらくの間守られるだろう。その先に続く毎日が楽しく明るくなればいいなと願いながら、今日は眠ることにする。歩く道は晴れであれ。

 

 

信頼している人間に電話で話を聞いてもらって少しだけ肩の荷が降りたように思う。覚悟ができたように思う。今日電話しようと思い立ち、行動してくれたその気遣いが泣けるほど嬉しかった。どうしても今日、絶対に声が聞きたかった。