パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

光と影と朝と夜と

昔からそうだった。多分物心ついた時からがんばってきた。がんばって取り繕うことだけが、すべてだった。それがわたしの生存戦略で、それがいつしか生き甲斐で、そうでないと見放されてしまいそうな気がしていて元気な私を、明るい私を、光っているほうを、見せてきた。けど、本当の自分はずっと暗くて、深くて、静かで、粗雑で、小さくて狭い洞穴のなかで夜が来るのを待っている怪物みたいな人間なんだけど。きっと誰もそんな私を望んでいない。昔、お客さんが言っていた今いる自分が本来の自分なのか、役割によるものなのか分からなくなる話。今ならすごくすっごくよく分かる。本当の自分はどれで、わたしはどんな自分でいることが正しくて、健やかで、幸せなのかよく分からなくなってしまった。毎日憂鬱だ。今週ずっと雨で、生理前で、便秘で、寝不足できっとそれも影響しているんだろうけど。てかそれがほとんどなのかもしれない。週末はゆっくり過ごしたいのに、バカだから後先考えず予定を入れてしまった。例によって、部屋は荒れ果てて、自分が心底疲れていることを知る。服が畳めなくなったら、休みが必要な合図である。まもなく大型連休に入るのだし、気負う必要もないか。私には音楽と甘いもの、自分を甘やかしてくれる人間たち、いるもんね。だから大丈夫。できるだけ早く眠れますように。私は私のままでよくて、私は私のままでいたい。私らしくいたい。ただそれだけのこと。

夜、私を甘やかしてくれる側の人間から電話がきた。自分より経験があって悩みを真摯にきいてくれてアドバイスをくれて、なおかつ本当のわたしを知ってくれている人間からのやさしい言葉に心底救われた。泣きそうになった。近くにそんな人がいるのは私の秘密のカードだった。誰にも明け渡すことのない、大切なカード。お守りみたいにしながら、実体のないぬくもりに包まれて眠る。