パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

積雪とゆめぴりか

今年一番の寒波が襲来した夜、私の住む街は一晩にして雪に覆われた。本当は大寝坊したくせに、大雪による遅延というていで事なきを得る。悠然たる面持ちで遅刻した。生まれてから今日までずっと運がいい。ほんの昨日までが秋で、今日からが冬だった。今日も今日とて残業に殺されかけながら死に物狂いで終わらして、12時まで営業している近所のスーパーへギリギリ滑り込み、牛乳と、卵と、豆腐といくつかのお菓子を買い込んだ。どうして私ばかりがこんな思いで、こんな夜更けまで、頑張らなくちゃいけないんだろう。出来損ないの咆哮は、あまりに小さく誰の耳にも聞こえない。

外に出ると、今朝積もった雪が固まっている。踏みしめるとジャリジャリとした音、それから遠くにおそるおそる走る車の音が聞こえる。それら以外は何も聞こえない雪の日特有の、シンと静まり返った街の中をタバコを吸って歩く。こんな疲れた日に限ってなぜか米も買った。炊き込みご飯が食べたいと思い立ったものの、いつ作れるのかは分からない。両手が塞がり全く身動きの取れない状態のまま、肺いっぱい煙を吸い込むと、ツンと冷えた空気も一緒に流れ込んできた。冬の夜に吸うタバコが一番美味しいと、まえに好きな男も言っていた。白い吐息が数十倍にもふくらんで目の前を通り過ぎる瞬間に、パンパンに詰め込まれた頭の中のなにもかもが、飛んで消えていく。

今日はひさしぶりに自分の至らなさを目の当たりにする日だった。えらいひとから指摘されたところは、私が最も目を背けていたところで、私が最も苦手とするところで、そしてこれまでひとつも変わらないところだった。こんなにも自覚的でいるうえに、他人から見てもそうだということは、本格的に改めなければいけないところなんだろうなと思うと同時に、それに直面することが怖くて、聞かなければよかったとさえ思った。どこまでも弱い人間だよ、わたしは。書くのも疲れた、終わる。写真は疲れすぎて落として絶望して拾うのためらったゆめぴりか

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