パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

(仮)大人

2022年の日記を記していないことが大変悔やまれる。1年前にわたしはどんな景色を見ていたのか、全然思い出すことができない。今年は書くぞ。今の私をちゃんと残すぞ。28歳なんて迎えてみればただの日常の延長に過ぎなくて、劇的に世界が変わってしまうこともなく、いつもより少しだけ特別な感慨に耽るだけ。少しだけ体力の衰えを感じるだけ。少しだけ肌のキメが荒くなっただけ、少しずつでも確実に年を取っていることを身体的な衰えで実感する。ただ思っていたよりずっと私の心は不完全で未熟で半端者のままだった。薄々気づいていたけれど、大人なんてこの世には存在しないんじゃないかと思う。ただ、周りの人間から自分がどう見られたいかを俯瞰して考えられるようになって、そんな自分を見せたい人の前で上手く演じられるようになっているだけで、人の中身なんてそう簡単に変わらないってことに気づいてしまった。だから年を取ったからといって、誰も何にも偉くないし、これまで私に威張ってきた年長者は変わらない自分を悟られないよう必死だったってことでしょう。今の私はまさしくそうで、本来あるべき自分の姿をなぜか簡単に見せることを拒んでいて、分厚い鎧を身にまとい必死で取り繕っているように思う。恰好悪い大人に成り下がったもんだよ。昔はこんなんじゃなかったはずなのに。そう思うと、私が憧れてきた大人のロールモデルは、くだらない矜持なんか持たずに全開で自分らしく生きている人だった。小馬鹿にされても、蔑まれてもそんなこと気にも留めないくらい自分を生きている人。好きなものとか夢中になれるものがあって、それを胸張って人に語れるような人。惜しみなく等身大の自分を曝け出せてしまう人。そういう人が私にとって大人の理想像で、私がなりたかった大人だった。ただまだこうして不完全であるという自覚を持っているならば、目指せるのかもしれない。今より良くなることは、もしかしたらないかもしれないけど、これ以上悪くならないように努めることは今からだってできるはず、そうだよね。きっとね。書きたかったのってこんなんだったけ、なんか違う気がするけど2023年の私はこんなことを思っていた。これを見たいつかの私は、どうか自分らしさを見失わないでいておくれ。周囲への愛も感謝も大切に持っていたままでいておくれ、どうか健康でいておくれ。どうか、今日より幸せなまま年を重ねて知らない街へ。