パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

Life Is Party,Life Is Show Time

先週までのどんよりとした陰鬱さは、またも音楽の力で晴れて渡り、心健やかなる状態。11月12日、小山田壮平を生で見た。andymoriの曲は、わたしに清濁併せ持つことを教えてくれた。「綺麗な顔のままで死ねるなんて思いますか」その問いに、いたく衝撃を受けた16歳当時。この歌詞に胸を打たれたということはきっと、当時の今より狭い世界の中で、幼いながらも、必死で思い悩んでいたんだろう。今でこそそんなものは些細なことで、くだらないことで、もうそんなところでつまずいたりはしないけど、鮮やかな色をした安い希死念慮は一丁前に持っていた。死ぬ時は花と愛する人々に囲まれて、この世になんの悔いもなく去るのだろうと思っていたけれど、そのような最期を迎えられるほうがほんの一握りで、世界中にはそうでない人の方が多いことを知った。綺麗な世界の上澄みだけをすくいあげて、汚いものは見ようとしない自分だったけど、andymoriの繊細な歌詞の作り出す世界を知って、わたしの死生観が大きく変わった瞬間だったともいえる。わたしはそのようにして、音楽の力で見聞を広げ、音楽の力で人の気持ちの分かる人間になれた。そんな影響を与えてくれた小山田壮平アコースティックギターで織りなす音楽は、これまでずっと音源で聴いてきたままに、強く伸びやかな声をしていて、陰鬱で少し塞ぎこんでいた最近の心にスルスルと心地よく響いた。ライブに足を運ぶことで、十数年来の感謝を伝えられたのであれば嬉しい。

SNSでは芸能人が、随分と年下の女性を娶ったとかなんとかでさまざまな意見が飛び交っている。みんな他人の人生について、つまらないことを捲し立てている時間があるのなら、半径5mほどにいる大切な人一人でも、今すぐ幸せにしてみせなさいよと思う。そんな気概もないくせに、他人が誓った愛に文句をつけるなんてとても野暮だなと思う。これは当事者だから言えること。彼らが向ける鋭い刃の矛先にわたしがいて、意図せず傷つけられている。

人を本気で好きになったことがある人ならば、世代も国境も性別も気にならないほどに、ただその人のことを愛おしく思って仕方がないと、分かるはずなのに。明日、自分の友人や近しいひとらがあなたの向ける刃の先に立つかもしれないというのに。人間は思っている以上に、他人に対する想像力を併せ持っておらず、いざ自分がその立場に立ってはじめて見える世界があるのだ。わたしが、なんのために本を読むか、なんのために音楽を聴くのか。それはわたしではない誰かの目で見た世界をより多く知ることで、わたしではない誰かに優しくあるためなのだ。