パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

ロックンロールはジャンルじゃない

ザ50回転ズのライブ行ってきた。ほくほくと興奮しながら帰路に着いています。今夜はまだ、眠れそうにない。ザ50回転ズのライブの後は決まってキーンと揺れる鼓膜の余韻を耳に感じながら、なんの音楽も聴かずに帰ることが私にとっての定番なのだ。なんだか、今夜目の当たりにした感動が薄れてしまうそんな気がして、この耳鳴りさえも消えてしまうのが惜しいのだ。

彼等のロックンロールには大爆音が何よりお似合いで、更にいうと出来るだけ小さなライブハウスがお似合いだ。熱苦しい熱気で充満した箱の中でひしめきあう人たちは、性別も年代も見事に皆バラバラでいて、今日ここまで決して交わらない人生を過ごしてきたけれど、今日ここで同じバンドのライブに来たという共通点を持っていることだけは確かなのである。いつも一人きりで聴いている音楽を知っている人間が、この世にはこの箱を埋め尽くすほどいることを知ると、大袈裟だけど私は一人ではないのだと心強く感じられるのだった。

彼等のSEは、ずっと変わらずDr.Feelgoodの『Riot In Cell Block Number Nine』 これがまためちゃくちゃかっこいい。

SEとは、お笑い芸人のステージにも必ずある出囃子(高座に上がる際にかかる音楽)のことである。毎回、赤く照らされたステージに勢いよく入ってくる3人を見るやいなやわたしたちは曲に合わせた手拍子で彼等を迎える。いよいよ始まるショータイムの合図は、いつも最高に心躍る瞬間だ。

彼等の音楽は所狭しにロックンロールが宿っていて、さらにはガレージパンクやブルースを感じる曲がある。父が好きだったハードロックとは全く異なっていて、無骨なヴォーカルスタイル、乾いたチープなギターサウンド、シンプルなコード進行が特徴的。若者の等身大の日常や世界観を持ったバンドが多い。そうだ(Wikiより)。でも私は音楽が一つのジャンルに捉われてしまうことがあんまり好きじゃない。受け手によって音楽は形が変わるものであったり、バンドは進化を遂げながら変わっていくこともよくあるから一つに括ってしまったら窮屈で、そんなのって全然ロックンロールじゃない。

ザ50回転ズの曲は海外からたくさんの影響を受けていて、変わらないスタイルを貫き通しているのは伝わってくるけれど、果たしてそれは本当にパンクだろうか?ガレージだろうか。彼等は彼等の信じる音楽を今日までずっと鳴らしてる。ザ50回転ズという名前の音楽が一番正しいように思う。どんなバンドとも替えがきかないような、たったひとつで唯一無二の最高にかっこいい音楽をしている。多い時で年間数百本にも及ぶライブをこなすダニー(Gt&Vo.)のギターテクニックは、右に出るものなんていない。少なくとも、私のせまい世界のなかでは。何より彼等の音楽は、ただ聴いていることができずに気が付けば腕を力強く突き上げてしまうような、体が疼いて踊り出してしまうような、会場にいる全員を夢中にしてしまう魅力がたくさん詰まっている。

聴いた話によれば、彼等は他のバンドと違ってメディアを通じて売れることを願っていないという。もっとメディアに出れば、もっと今時の装いで広告やSNSの宣伝に力を入れればいいのにと思うこともあるけれど、ここにもきっと『自分達の音楽が分かる奴だけに届けばいい』といった強い信念があるんだと思う。知らんけど。私はもっと有名になってほしい、なんて浅はかにも思ってしまって、布教活動に勤しんではいるものの他人の好きな音楽をなかなか好きになれないことも、ひとりの音楽好きとして理解しているので、全くの無意味であるとも同時に思う。彼等が望む音楽が出来ているのならば、他に必要なものなんて一つもないんだろうな。

何度行ってもチケットとドリンク代以上の喜びと感動を胸いっぱいに残してくれる。彼等の掻き鳴らすロックンロールを聞くたびに、毎日を生きていくための活力がもらえる。時折、この素敵な時間が永遠ではないことを思い知らされる瞬間がある。私の悪い癖でもあって、今を楽しむことよりも終わりが来ることを想定して身構えてしまうのだ。失いたくないなと思うけれどその度に、彼等に出会えなかった人生よりも彼等に出会ってから生きる人生のほうが何倍も、何十倍も豊かであることを忘れてはいけないと思う。だからいつかの別れに後悔しないように、こうして足繁くライブハウスに通っている。やっぱり大袈裟だけど、彼等の音楽にたくさんたくさん救われてきたからこそ言える。これからも彼等が音楽を届けてくれるかぎり、私はザ50回転ズの大ファンである!