パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

20230830

人もまばらな水曜21:44、情けなくヘシ折れた人差し指の爪を直してもらうために金山へきてさぬき安べえで遅めの夜ご飯をいただいている。何回行ってもネイリストとの適切な会話に困る。店内BGMで中島みゆきの「時代」が流れてる。今日別れた恋人たちも、生まれ変わって歩き出すよ。ところでこの世には、形容し難い思いと関係性が溢れかえっている。めんたい釜玉うどんとイカ天を交互に咀嚼しながら思うことじゃないかもしれないけど、自分に都合のよい形のまま、守るために、あいまいしておく必要がある。ひとたび型にはめてしまえば、それらは途端に崩れ去り二度と同じ形に戻ることはない。ぼんやりさせておくことで救われることが確かにあり、そんな人がたくさんいる。誰かにそんな話をすると、途端にそのひとの常識の範疇にある型にはめられてしまうから、彼等は固く口をつぐむ。そのためなかなかその場面を目の当たりにすることって少ない。でも、たしかに熱い思いを持って誰にも明け渡してたまるかといった覚悟でそれを所持してる人は多いんじゃないかと思う。大人になれば尚更、そういうのが必要なひとっている。そうしておくことで、守れる何かがあるのなら、暴くような野暮な真似はしない。ただ、そんなヤワなものを抱えていると疲れてくるんだよね。誰にも打ち明けられない掴んだら消えてしまいそうなものを自分の手のひらだけで抱えておくのは結構大変。だれかにそれの存在を認めてもらって、型にはめることで救われる人も同じくらいいる。打ち明けるかどうかの判断基準はきっとさまざまで、それを明け渡されたひとは喜ぶひともいるが、なんと重たい十字架を背負わされてしまったのかと感じる人もいる。だからわたしはこのまま、うすぼんやりとしておきたい。わたしの繭の中で、あたたかく守り抜いてみせる。