パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

20230823

ジメジメと自分の人生に思い悩んでいる間にも、えいや、と思い切って足を踏み出した人間が新しい世界へと旅立っていく、旅立ってしまう。腕を掴んでも、足を掴んでも他人の人生は待ってくれないことくらい分かっていた。私の生きづらさの根源には、間違いなく歪んだ生育環境にあり、しばらくのあいだそれを心底恨んでいたけれど、もうそれを言い訳にはできないくらいに私は自分の人生を生きてきたのかもしれない。ともすれば、ここから先の未来は私の強い意志と、決断によって手繰り寄せていかなければならないらしい。正解はずっと見つからない。今日までもずっと探し続けてきたけれど、誰も正解だとは言ってくれない。これからもきっと、自分の人生について誰かに正解だと言ってもらえることはない。薄々気づいてはいたが、なんだかもう今日は特にそう思った。彼女が笑って、幸せそうにでもどこか不安げに打ち明けた決断を共有してもらったときの眼差しが、わたしとよく似ていた。みんな自分の人生が正解だったのか、美しいのか、正しいのかなんて分からないまま生きているんじゃないか。何を、自分ひとりばかりが誰より深刻そうに思い悩んだふりをして。ばかみたい。いつだって、自分で歩く路を決めた人間が、ただただ羨ましい。

どの路を選ぶかではない。どんな風にこの路をゆくか。それが私の唯一の路です。(竹久夢二)

それにしても、長く関係を続けていくと大切な人たちの人生の分岐にふれることができる。改めて感じる。私たちは大人になった。彼女たちの物語の続きを読ませてもらえることがどれほど幸せなことか。物語は多ければ多いほどいい。けれど、結末まで読ませてくれるひとなんて多くはない。手に取る物語すべて、何度だって読みたいものばかりだ。どんな物語だって、星の評価をつけられないほど素晴らしいに決まってる。私も、自分の大切な物語を語り合えるように生きていかないと。今夜を境に、真夏のピークが過ぎた。8月23日23:59の駅構内は、雨上がりのひんやりとした心地よい風が吹いている。もうじき季節が変わるだろう。