パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

進む先は後ろか、前か。

新年度のパキッとした緊張感が薄れて、徐々に日々が馴染んできたところ。気温は20度を超えて、早くも夏日?をむかえる地域もあるのだそうで。せかせかと忙しいフリしながら仕事しているあいだに身近な人間の重大発表を、短期間にふたつも聞いた。

突然の報告に心底驚いたけど、まあ許容範囲内であった。人生には様々な色合いと、バリエーションがある。そのどれもに私は寛容なほうであると思う。同じ人間が一人としていないのと同じように、同じような人生なんてきっと存在しないはず。そういう理解のもと、粛々と打ち明けられる話に耳を傾けた。

そこに至るまでの葛藤や迷いなんかを彼女らは明言しなかったけれど、思えばそんな予兆はこれまでの会話の所々に垣間見えていたのだった。その重大な決心を、私に話そうとしてくれたことがまずは嬉しい。この秘密、私は守り抜くからねと誓う。大事な胸の内を話してくれた時に感じる、全幅の信頼を無碍にしてたまるかと思う。

祝儀返せよ!って、冗談でも言ってみようかと思ったけど品がないのでやめておいた。ひとりはあっけらかんと笑って、ひとりは心底凹んでいるようすだった。ただふたりとも、相手を忌み嫌っているようすではないのがとても印象的だった。彼女らは賢明だから、きっとお互いがこれ以上傷ついてしまうまえに、歩み寄れ(ら)ないと判断をして、決断したんだろう。

そもそもわたしは結婚に対して、物心着いた頃からずっと後ろ向きで、且つ臆病でいる。適齢期をすぎてもなお、なんだか結婚生活をしている自分をあまり想像できないままに30歳を目前としている、うすぼんやりとしたまま彼女らの報告を聞くに至ったのだ。

相反して、この土日に後輩から結婚式の日取りについて連絡があったりもして、なんだか私を取り巻く人々の人生が目まぐるしく回っているような感覚がする。そんなバリエーション豊富な色とりどりの人生が少しだけ羨ましくもある。変わるのが怖くて、変えないを選んでいるわたしには真似できない、リッチな選択肢で溢れている。

選び取れない自分と、選んだ先に別の選択肢がみえたふたりと、どっちがいいとか悪いとかはきっと問題ではない。納得するまで何度だって進んでもいいし、戻ってもいいことを知った。それもどれもこれもすべて、正解だろうから。