パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

20221219

人生で初めてのことって、この先あと何回、どんなことを経験できるんだろうと考える。毎日毎日おんなじ単調な日々の中にもそれらに出会えるチャンスはきっと潜んでて、気がつけるのは自分次第。降りたことのない駅で降りてみるとか歩いたことない道で帰るとか、たぶんそういったもの。普段は選ばないような選択肢を突如選んだりする思いがけなさを楽しめたらきっと人生は何倍にも広がっていくような気がする。そんな本日、いつもお世話になっている美容院で、人生で初めてのネイルを施してもらった。最寄りのいい女たちは指先がとても綺麗。心のどこかで憧れてはいたんだけど、私の指は装飾するままでもなく不恰好に太いし、爪はそれなりに切るようにしているけど、どうも苦手で欠けていたり、ささむけたりしていて、とてもじゃないけど美しく着飾るような爪ではないと、どこか諦めてもいた。でも爪を美しく装飾したいい女たちは皆んな、爪を眺めて嬉しそうに微笑んでいるばかり。とても幸せそうに。その姿を近くで見ていると不思議なことに、わたしもその幸せを経験してみたいなどと思い始めてきたかと思えば、街中は煌びやかに装飾されたイルミネーションが煌々と光る季節も相まって、気づいたら予約を完了していた。みるみるうちに、不恰好な爪はやすりで熱心に磨がれて形を変えてゆき、キラキラと輝くラメたちが光に反射して指先がまるでイルミネーションのよう。ネイリストさんの手際の良さに感心していたのも束の間、あっという間に出来上がった指を見て高鳴るのは胸の奥底。どちらかといえば男性性の強いわたしにも、美しさにときめく心があったとは。まるで自分の手先じゃないみたい。女性が装飾品をはじめとする目で見えるキラキラに心躍るのは、祖先が水を求めて向かった海に反射した光の美しさを、遺伝子が記憶しているからと聞いたことがある。どうやらそんな気もする。指先が美しいだけでこんなにも健やかな気持ちになれるなんて、わたしはとうに知らなかった。自他共に認めるズボラでガサツさを兼ね備えた人間は、この先に指定された次回の目安時期までに直しに行けるかは分からないけど、できるだけこのキラキラを保ち続けていたいと思う。これは精神の話。f:id:rccp50z:20221225224510j:image