パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

昨夜見た悪夢の話

そこはわたしの家で、確か夜で、両親は眠っている。

突然猛烈な吐き気に襲われてわたしは暗闇の部屋を這いずってトイレに辿り着く。そのトイレは六畳ほどの部屋の奥にポツンとある洋式。便器を抱え込んだままうずくまってずっとずっとずっと吐き続ける。酒を飲みすぎたせいなのか、体調が芳しくないからなのか分からない。けれどそれはとめどなく、勢いは収まることなく。いつのまにか起きてきた母親が居間にいたから苦し紛れに塩水とタオルを頼んだ。すると床にもう一人母親が寝転んでいることに気づく、しかしそれが本物ではないことは何故だかすぐに理解した。

そのもう一人の、「偽物の母親」はとても苦しんでいるようにみえる。とても痩せこけていて、小刻みに震えている。母親だから助けてあげたいと手を差し伸べようとするも、本物の母親に引きとめられる。助ける必要などないと。なぜなら ソレ は、偽物だから。明らかに苦しそうな 偽物の母親 を横目に、わたしの吐き気はまだ治らない。吐き続けていたら父親も起きてきたが様子がおかしい。わたしを見つめるその眼差しがあまりにも冷ややかでわたしは汚したトイレを必死に拭いて泣きながら謝っていた。

父親は偽物の母親を足蹴にして仕事に走って出て行った。その後ろ姿があまりにも寂しくて、虚しくて。苦しそうな偽物の母親はまだわたしに助けを求めている。助けてあげたい助けてあげたい、でも、できない。僅かに残された力を振り絞ってふらつきながら立ち上がったその偽物の母親には両腕がなかった。顔面は赤黒く腫れ上がり、先ほどまで横たわっていた床には黄色のシミがいくつもできている。ふらつく偽物の母親を支えようとしたら本物の母親に頭を掴まれ壁に叩きつけられた。

どうしてこんな目にあわされているか分かってる?分からない?じゃあ教えてあげる。痛みはないが、叩きつけられた壁に血が流れているのがみえた。わたしの吐き気はまだ、おさまらない。