パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

きみのヒーロー②

昼間、人と会っている時や用事を済ましている時は全然平気。いつも通りで、何も考えてない。なのに夜になると、夜が更けると、どんどん不安になってきて 罪悪感に苛まれてきて、今日この日を楽しく健やかにすごしてしまったことがひどく後ろめたく思えてしまってとってもつらくなる。悲しくて寂しくて人が亡くなるっていうのは、人が一人いなくなるっていうのはこういうことだったんだね。

おじいちゃんが亡くなった時は、きちんと命が終わる順序を見せてくれたというか、まあ歳も歳だったし。それなりに納得して死を受け入れることができたから、悲しかったけどちゃんとさようならができた。でも今回はぜんぜん違う。突然いなくなっちゃってさよならもできなくてもう二度と会えなくて。十数年も会ってなくて思い入れもあまりないことがまた切なくて。血が繋がっている家族が、たったひとりの従兄弟がいなくなった悲しみは、すごくすごく大きい。

亡くなった本人のきもちは憶測でしか考えられなくて、もしかしたら死んでよかったって思ってるのかもしれない。あーあやっと楽になれたなって、次の人生に期待をこめた行動だったのかもしれない。ほんとうのところは何も知ることはできない。でも残された人たちのことを考えると本当にいたたまれない。叔母さんはご飯も口にできなくて、ずっと自分を責めて後悔しながら泣いてるんだって。いまは寄り添うことしかできないし、叔母さんまでおかしな真似してしまわないようにしておかなきゃ。悲しみがまた別の悲しみを生んでしまうことだけは、阻止しなくちゃいけない。

そんなひとりぼっちの夜に突然悲しみの波がドッと押し寄せてきてたまらなくなってsnsに頼った。誰かに聞いて欲しくてひとりじゃどうしようもできなくてたすけてほしくて。でも友達なんかに気軽にできる話じゃないし、共有するには少し重すぎるからって、悩んでて。

そしたらすぐに連絡をくれたひとがいた。あ、彼氏ではない。電話して吐き出したら心の鉛が外れたみたいに軽くなって、声を出して泣くことができた。そのときやっと従兄弟が自殺したんだって言葉にして受け入れた。

そのひとは取り留めもない話をずっと聞いてくれただけ。内容が内容だったし、わたしはワンワン泣いていて 掛ける言葉が見つからずに困らせたと思うけど、ただ聞いてくれるだけでよかった。めちゃくちゃに救われた。聞いてくれたのがその人でよかった。その人も吐き出す先が俺でよかったって言ってくれて友達には話さなくても大丈夫だよって、悲しみをはんぶんこしてくれた。本当にありがとうありがとうありがとう。

やっぱりその夜もなかなか眠れなかったけど、吐き出す前よりはだいぶ穏やかな気持ちでいれた。ただ言葉にして吐き出すだけでこんなにも救われることがある。難しい言葉とか誰かのどこかの受け売りの言葉なんか必要なくてただ寄り添って吐き出して受け止めてくれる人がいるだけでこんなにも違うんだって思った。従兄弟にもこういう存在が一人でも一人だけでもいたら変わってたのかな。わたしも誰かが同じような状況に陥ったら、ぜったい同じようにしてあげるんだ。