パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

20221129

昔さ、じーちゃんがまだ和菓子屋やってたときによくお菓子を持たせてくれてたんだけど、ずんだ餅だけは子供の頃の私の口には合わなくて、粒感の残る独特の歯触りとか、極端に控えめの甘さとか、素材の味を生かしてたって今ならわかるんだけど、無理で。親がいないおやつの時間にひとくちだけ食べて、ティッシュに丸めてゴミ箱に捨てたことがある。悪いことをしてる自覚はそれなりにあったし、ティッシュに丸めたずんだ餅は他のゴミよりもまんまると大きく目立っていて、これは親にバレる気がするってずっとゴミ箱が気になって仕方なくなった。親が仕事から帰ってきて、アラーずんだ餅食べたの。おいしかった?って聞かれた時にわたしは泣いて。何事かと駆け寄るお母さんに、ずんだ餅捨てたことを泣きながら白状した。あれは私がはじめて抱いた罪悪感だったんだと思う。じーちゃんあのときはごめん。お母さんも。あと、ちゃんと言えてえらかったね。今でも和菓子屋さんでずんだ餅を見かけるたびにそうやって思い出してる。今この歳で逆に食べて見たいすらある。