パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

椿町発展街

椿町発展街⑤

モテるでしょう、顔を見て目を合わせるたび男の人は皆、そう言う。そんなことないですよ、わたしは謙遜を試みる。夜の仕事に従事するおんなのこたちは皆、自分の価値を知っている。それが年を取るたびに磨り減っていくものだということを知らない。価値のあ…

椿町発展街④

椿町発展街① 椿町発展街② 椿町発展街③ 先輩からの着信に気づく。それは二次会が解散して帰路につこうとしていた矢先の出来事だった。へべれけの先輩が言う「華木、まさかもう帰ろうとしてんのか?夜はまだこれからだろうが!」帰りたい、と真っ先に思ったけ…

椿町発展街③

椿町発展街① 椿町発展街② 好きな男の前でとことん従順になってしまう女なんて、この世の中に掃いて捨てるほどいるんだろう。そんな女どもの気が知れない。なのに、いつからだ、わたしも気がつけばそちら側の女だった。 ずっと伸ばしていた自慢の黒髪を鎖骨あ…

椿町発展街②

椿町発展街① 「だってそうでもしないと、別れてくれなかったから。」 丁寧に整えられた爪と、細長い指のあいだにタバコを持って、深く吸い込んで吐き出す煙の中にみえたあまりにも悲しい表情に、おもわず見惚れていた。 アザミさんの横顔が好きだ。高く筋の…

椿町発展街①

PM:6:00 コンビニのトイレで化粧が崩れていないか隅々まで確認する。よし、ちいさく声に出して気合いを入れた。古ぼけたネオンのアーケードをくぐり抜けてピンク色に光る店の入り口の手前、客引きの男の人を横目に会釈する。あのウィンドブレーカーだけじゃ…