パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

秋の大荷物

ふと気づけば、エアコンをつけなくなっていた。

夜風がきもちよく、煩わしかった湿度を感じさせないカラリと晴れ渡った天気が続いている。例年より少し遅ればせながら、ようやっと秋が来たようだ。

昨日彼氏と夜ご飯に秋鮭のホイル焼きを作って食べたんだけど、山盛りのきのことほろほろと身ほどける鮭がすごくおいしかった。芋栗南瓜味のスイーツが立ち並び、街にはジャック・オ・ランタンの置物で溢れかえっている。

ハロウィンを過ぎたらじきにクリスマスがやってきて、あっという間に年越しだ。今年は異常に時が過ぎるのが早い気がするが、それは毎年思っていることだろうな。向かおうとしている毎日はとても長く感じるのに、振り返る日々はこんなにもあっさりと過ぎてしまっていて、なんて不思議なんだろう。

最近は、仕事がうまく立ち行かなくなっていたり、職場の人間に対する負の感情で心穏やかではない日々が続く。どんどん足枷が増えて身動きが取りづらくなり、荷物が増えて両手が塞がる。重たいから持って欲しいと頼めるひとは少なくなっていって、荷物が重たくないかと気遣ってくれるもおらず、静かに耐え忍ぶしかない。これが大人になるということか、と自分に言い聞かせながら、全然納得いってない。

今にでも、ストンと下ろしてしまって身軽さを取り戻したいけれどそう簡単には下ろせない。そう簡単に下ろせないところまで来たんだな。何も持たせてもらえないよりはマシか。こんなに荷物を任せられる場所に身を置けることは幸運なことなのかもしれないし。持ち前のストレス耐性によって、こんなポジティブな考え方だってたった数行でできるようになった。成長したと思う。昔の私なら持てる荷物には限りがあって、両手から溢れそうになれば泣いて助けを求めてたっけ。

今や中国雑技団よろしく、足と頭まで使って一輪車で運んでる。随分とたくましくなって、どうだい、これが大人ってものよ。

明日からも私は、両手いっぱいの荷物をまるで重さなんて感じさせないくらいの涼しげな顔で運びながら、急加速して進む毎日を一生懸命歩くんだ。