パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

20221208

私たちがまだ世界の中心で、最強の女子高生だった頃、私たちだけに用意されたささやかなパーティが好きだった。パーティの内容なんてなんでもよくって、親に用意してもらうお昼のお弁当をみんなでお揃いのオムライスにするパーティ、バレンタインに手作りのお菓子を持ち寄るパーティ、11月11日はポッキーとプリッツのパーティ、女子の数ほど色とりどりのパーティが用意されていた。そのうちの一つが、私たち二人による二人のためだけのおでんパーティだった。わたしたちは寒さで真っ赤になった剥き出しの素足を晒して通学路を闊歩しながら、それとは相反するぐるぐる巻きのマフラーを巻いて最寄りのコンビニへと向かった。成長期只中のわたしたちはうちにある晩ごはんの時間まで空腹は持たない。思い思いに詰めてもらったおでんを店先でほおばった。そんなパーティ。なんか多分お互いが帰り道におでんをたべたくなったのはそれが最初で最後だったみたいで、第二回の開催は、10年後の今夜執り行われたのである。10年後の私たちは、お洒落なおでん居酒屋でひとつ340円もするバカでかい大根をふたつに切ってもらって近況報告がてら頬張っていた。物思いに耽る場面なはずだけどなんせ記憶では一度きりしかなかったものだから、懐かしくなるには思い出が足りない。でも、わたしたちはたった一度きりのパーティが色濃く鮮明に記憶されているから、たった一度きりの開催を思い出すだけで、それだけでもう、十分すぎるほどだった。大人になったわたしたちは卓上の柚子胡椒と、黒七味と、辛子で味の変化を楽しんでいたりして、なんだまるで立派な大人みたいじゃんって。中身も話し方もそんな変わらないのに不思議だね。深刻な悩みを打ち明けたときに、あっけらかんと笑いに変えてくれるところありがたいって思う。なんの根拠もないのに言ってくれる絶対大丈夫!に、私はずっとずっと救われてる。これからもきっと救われるような気がする。おでん食べながら思うことじゃないけど。私たちのパーティは、きっとこれからも開催される。f:id:rccp50z:20221225224607j:image