パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

思へば遠くへ来たものだ

毎日のようにやるせなくて泣いて帰ってた仕事終わりの胸の痛みや夜道の風景を鮮明に思い出すことができなくなっていて、まるで遠い遠い昔のことみたい。今私は5年目の春を迎えて、入社後はじめて異動を経験して、名古屋へ金を稼ぎにきています。23時過ぎにオフィスの灯りがついているのを見つけて、どんな日々がまちうけているのだろうと震え上がっていた日から4年も経ったなんて正直信じられないし、いつのまにか私の年次も上から数えた方が早くなっていた。

人の入れ替わりの激しい弊社では、関わる人もガラリと変わって当時の私を知る人間もすくない。毎日毎日代わり映えのない日々のようにも思えるけど、ふと後ろを振りかえればあの日の自分はもうずっと奥に、ちいさく佇んでいる。思へば遠くへきたものだ。

何かを長く続けることができない恥の多い人生を過ごしてきた私が、自分の意思で4年間続けることができた唯一のもの、仕事。もちろんそれは労働の対価が得られるからであって、生活をするためになくてはならないものなのであって、簡単に辞めるという選択肢を選ぶことはできないだけの可能性も間違いなくある。そうはいっても、世の中には簡単に辞めることができちゃうひともいるんだから私は十分すごいのだ。すごいのかな。すごいのかも。

あの頃、壁の向こう側には何があるだろうと幼いわたしはよく思い悩んでいて、一刻もはやく向こう側に見える景色が見たいと願ってやまなかったけれど、4年経った今もなお思いのほか発展途上で、やっとコツを掴んで登り始めた壁の高さに驚いている、そんな感じです。早く向こう側の景色を見たいとか、超えたいとは少し異なる感情で、うまく登れるようになりたい。これが一番近いのかもしれない。もう少し、頑張りたい。向こう4年はどんな毎日になるんだろう。