パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

カルテット

自分の思いや、創作した話を書くのは得意(大好き)だけど完成した作品を見た後に書くレビューがなんとも苦手だ。ドラマ「カルテット」を見た。数年前に放映されていた連続ドラマで当時とても流行っていたのだけど、わたしは見ていなかったため、皆が揃って唐揚げにレモンをかけるかかけないかで揉めるくだりのことは知らないままだった。私は自分に興味のないものは、まるで自分の人生にはなんの関係もないといったそぶりで、遠く突き放し見向きもしないことがある。すすめられた映画も本も一向に見る気がしないのは、私だけではないはずだけど。そのようにして、当時高く評価されていた作品もまさに人々の記憶から消えようとしているときに、やっと遅れて出会うのだった。それが私のタイミングなのだから、そりゃもう仕方がない。「カルテット」をはじめ、愛してやまないドラマ「最高の離婚」を脚本した坂元裕二監督には心底驚かされてばかりなのだ。ほんの些細な感情の機微や、人間の心の奥底に眠る繊細な揺らめきを、ものの見事に映像化してしまえる才能の持ち主だ。坂元裕二監督が描く人間は、どこか欠けていたり、どこか足りなかったり、どこか抜けていたりする。不完全な人間を描くのがとても上手いと素人ながらに思うのだ。高く評価されている理由はきっとそこにあって、どんな人間も自分は取るに足らないだろうと嫌悪に陥る日があるに違いなく、そういう生き方しかできない人がいるということを彼は、とても理解している。だから彼の作品の中に生きる登場人物たちが紡ぐ台詞が、心に刺さって仕方がない。彼の作品には、登場人物が長く独白するシーンが多く見受けられる。映像もシンプルで、感動的なシーンにありがちな「ここで泣け!」と言わんばかりの辛気臭いBGMも流れたりしない。ただ演者の演技力と、台詞の一つ一つを頼りにして視聴者にメッセージを伝えている。君はそのままでいるだけでとても価値があり、完璧な人間などどこにもいないことを作品を通して教えてくれる。そんな気がする。また、ただの恋愛沙汰で終わらせることなく、人と人との繋がり、たった一言の関係性で終わらせることができない絆についても細やかに描かれてる。更には決してハッピーエンドだけで終わらない点も、今わたしたちが生きている現実に程近いと感じる。人生はとても長く複雑で、美しい出来事ばかりではないことを坂元裕二監督は伝えたいのかもしれない。違うかもしれない。今後の作品を楽しみにするとともに、以上を以ってしてレビューとさせていただきたい。