パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です。

1ドルの夜景とプラネタリウム

あれからもう3年も経つんだ。付き合っていたら3年か。3年という月日がどのくらいの長さかといえば、中学、高校生だったらとっくにもう、卒業の時期ですね。

元気にしていますか?ちゃんとご飯を食べていますか?毎日健やかに生きていますか。ただでさえ細いんだから、ちゃんと食べていますように。 時の流れってばどうしてこうも速いんだろうね。男の子ってどうなの、元カノとの記念日や誕生日のこと、おぼえているものなの?どうなの。少なくとも毎日を忙しく生きていたあなたはもうこんな昔のこと、きっと覚えていないのかもしれない。

付き合っていた時はわざわざiPhoneのカレンダーに記してくれていたよね、あれは大切な日だと思っていたから?それとも書いておかないと忘れてしまうから?どちらにせよ当時のわたしは、それを知ったとき嬉しくて嬉しくてたまらなかったこと、今でも覚えているよ。初めて会ってお茶したこととか、初デートのプラネタリウム開始15分で爆睡してしまったこととか、わざわざ車で会いに来てくれたこととか、告白された瞬間とか。

五月のある晴れた日の夜に、あなたの家の近くにある高台の公園で見た100万ドルには到底及ばない、ささやかな夜景。自分でも驚くほど細いことまでよく覚えていて、あの2年間とあなたがわたしの人生においてどれほど大切で忘れたくないものであったのか、別れてからきょうまでの約一年間でそれはそれはよく思い知ったの。わたしはあれからいろんな経験をしてね、たぶんあの頃のわたしとは大きく違っていると思うよ。良くなったのか、はたまた悪くなってしまったのか。それはごめんちょっとわからないけれど、一年前とはまるで違っているのだとおもう。 きっとあなたも、随分と変わってしまっているんだろうな。あなたがいない毎日が想像できなくて怖かったけど、案外ぜんぜんへっちゃらで(まあたくさん泣いたりはしたんだけど)わたしは周りに愛されて恵まれて、今日まできちんと生きてこれたよ。

一年も経ったのにまだあなたの話をするなんて未練がましくてどうかしてるって思う。でもこれたぶん忘れちゃいけないきもちなんだとおもって、もう無理に忘れようとするのはやめたんだ。心の奥深くにねむる神棚に大切に大切に祀ってあるよ。たまに開けて覗いては、水をやったりしながら清潔に保っている。

もうきっとこの先二度と会うことはないんだろうけど、2年後も、3年後も、ずっとこの先も大切にしていくから忘れることはぜったいにない。わたしの中にある、最も暖かい感情です。こんなきもちを教えてくれてほんとうにありがとうね。これ最後の電話で伝え忘れてしまったから、ここに書いておこうっと。それでは、身体に気をつけて引き続き最高の人生をお過ごしください。かつて世界で一番大切だった人に向けた手紙。書くとしたらたぶん、こんな感じ。